彼の地で
氷の上の王女は舞い
彼女自身を捧げきった
傷ついた王女
苦難を歩んだ王女
日々たゆむことなく
ひと筋に向かっていった王女
彼女が闘っていたのは
この世に限りある
形と色を持つ
王冠の輝きのためではなかった
それは
この世の限りあるからだとこころが
優劣を競いあうためのもの
彼女が闘い
倒れ
そしてもう一度
溢れる思いのすべてを表したとき
彼女の頭上に載せられた冠は
形を持たず
色を持たず
ただ透きとおった
名もなき冠だった
それはまるで
夜空に輝く星と
私たちとの間に
透きとおった
果てしない空が広がっているように
目に見えないけれど
たしかに
私たちと星の輝きが
つながっているように
彼女の頭上にそっと置かれた
透明な
透明な冠
それは
なつかしい天の母が
優しい頬笑みで
彼女の頭をそっと撫でるように
いとおしい魂を
そっと抱くように
彼女の心は
形を持たず
色を持たず
あまりにも透明だったから
見えない手で
彼女の上にもたらされた
名もなき冠
天は地上の私たちに
その瞬間を
等しく垣間見せてくれた
天と地をつなぎ
御業をなしとげる王女を
私たちの前に遣わしてくれた
その透明な瞬間を
等しく分け与えてくれた
王女の冠の光は
透明な粒子になり
私たちの心に
消えない光を灯す
その光は
倒れこむ人を揺り起こし
深く眠る魂を目覚めさせる
私たちが
また前を向いて
力をふりしぼり
あと一歩
歩んでいくために
その輝きは
生きる希望となり
私たちの胸を
照らしつづける